筑波大学

診療情報- CLINICAL -

1.診療実績

 筑波大学附属病院膠原病リウマチアレルギー内科では、茨城県全域ならびに近県の医療機関より、膠原病症例の紹介を受け付けております。外来初診患者数、入院患者数は年間300例程度(下表)であり、当科にかかりつけの患者様は2,500人程度おられます。

診療実績

2.生物学的製剤について

 生物学的製剤とはバイオテクノロジーを用いて製造されたタンパク製剤であり、病態に関与する特定の分子を標的として作用します。2000年代になってから様々な生物学的製剤が登場し、現在では関節リウマチに対して広く用いられている他、全身性エリテマトーデス、血管炎、ベーチェット病、強直性脊椎炎、乾癬性関節炎など様々な疾患に対して高い有効性を示すことが知られており、リウマチ・膠原病領域における新たな治療選択肢として注目されている薬剤です。当院でも、この生物学的製剤を使用した治療を積極的に取り入れています。生物学的製剤はいずれも注射製剤であり、製剤によって点滴か皮下注射の二通りの投与方法があります。
 膠原病リウマチアレルギー内科では、点滴投与の生物学的製剤については、投与前に生物学的製剤専用の外来である「化学療法前診察」で医師による体調の確認を行ったうえで、「外来化学療法室」で投与を行うという体制をとっており、安全に薬剤を投与できる環境となっています。
 皮下注射製剤の自己注射を開始する場合は、看護師による自己注射指導を行い、正しく安全に投与できるようなサポートを行なっております。

3.関節リウマチの画像評価について

1) 関節リウマチ診療における画像検査

 生物学的製剤やJAK阻害薬などの、高い治療効果が期待できる薬剤の登場により、関節リウマチの「早期診断」の重要性がより高まっております。すなわち、関節破壊を防ぐ効果のある薬剤を、発症早期から使用することが、将来の関節機能を守ることに繋がるためです。近年の関節リウマチの治療成績が向上しているのは、検査の発達による部分も少なくありません。
 関節リウマチ診療における最も基本的な画像検査は、手足の単純レントゲン検査です。しかし、単純レントゲン検査では関節リウマチの病変そのもの(≒滑膜炎)を調べることはできません。滑膜炎が引き起こした、ある程度進行した段階の骨破壊が検出されます。骨破壊が単純レントゲン検査で検出された段階での診断は、本当の意味での「早期診断」とはならないのです。

2) 関節超音波検査

 関節リウマチは関節滑膜の炎症、すなわち「滑膜炎」を起こす疾患です。この滑膜炎を観察するためには、関節超音波検査が有用です。この検査では、関節を構成している骨や腱、滑膜などを描出し、評価することができます。関節リウマチを発症して間もない、早期の(まだはっきりとした骨破壊を起こしていない)状態であっても、異常な所見を発見することが可能です。また、滑膜炎の程度を評価することによって、治療効果の判定に使用される場合もあります。
 当科では、外来ブースに関節超音波装置が設置されており、普段の診察の際に役立てております。また、関節超音波検査のための特別な検査枠の設定があり、日本リウマチ学会登録ソノグラファーの資格をもった医師が中心となり検査にあたります。

3) 当科における低磁場手専用MRI

 MRIは関節超音波検査と同様に、関節の評価に適した検査法です。磁気と電磁波を用いて体内の様子を描出する検査であり、単純レントゲン検査では写らないような、微小な骨破壊を検出することが可能です。関節リウマチに対して使用すると、前述の滑膜炎の他に「骨髄浮腫」という特殊な所見が写る場合があり、診療に役立てることができます。
 しかし、一般に広く使用されている全身MRI装置は、一件の検査を行うために多くの時間と人手が必要となるため、関節リウマチの診療においてMRI検査はあまり普及しておりません。閉所恐怖症の方や、体に金属が入るような手術をされた方には実施できない場合があるという問題点もあります。
 そこで当科では、低磁場手専用MRI(compacTscan)、通称コンパクトMRIを用いた検査を行っております。この装置は、関節リウマチで侵される頻度の高い、手の関節を評価することに特化しております。装置に手だけを入れて短時間で検査を行うため、閉所恐怖症の方でも問題なく検査を受けられます。また、低磁場ゆえに周囲環境への影響も少ないため、外来ブースに設置し年間約200件の検査を行っております。

低磁場手専用MRI

4.膠原病合併妊娠外来

 関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、抗リン脂質抗体症候群、シェーグレン症候群などの膠原病疾患は妊娠可能年齢の女性にも発症することが多く、これらの患者様は結婚・妊娠・出産・育児などの、人生における大きな出来事や変化に直面することになります。特に妊娠・出産を望んでおられる患者様は、膠原病疾患と付き合いながらの妊娠・出産に不安を抱えている方もいらっしゃると思います。
 妊娠・出産と膠原病の治療との両立は重要な課題であり、早い時期からひとりひとりの状況に合わせた妊娠を視野に入れた治療計画が必要となります。そのため患者様、そしてご家族様がより安心して妊娠、出産を迎えていただけるよう当外来では妊娠前から産後にかけてのカウンセリング、ケアを行えるよう、専門外来として設立されました。

1) 膠原病合併妊娠外来の特徴

  • 妊娠をご希望される膠原病患者様への妊娠前からの相談、カウンセリング、ケアを行なっています。
  • 妊娠された際には、当院の産科と連携して診療を行います。
  • 出産後約1年の期間は、ご希望に合わせて産後の体調をみながら膠原病疾患治療の継続を行います。

2) 受診に際して

 当院通院中の患者様において当外来受診希望の方は、まず外来主治医へご相談下さい。他院受診中の患者様は紹介状をご持参の上、当院予約センターにて初診外来の予約をおとりください。

5.脊椎関節炎外来

 脊椎関節炎(spondyloarthritis;SpA)とは、体軸関節、すなわち脊椎関節や仙腸関節などの体幹部の関節と、手足の関節に炎症が生じる疾患の一群です。強直性脊椎炎や乾癬性関節炎、炎症性腸疾患を伴う関節炎、ぶどう膜炎関連脊椎関節炎、反応性関節炎などが脊椎関節炎に含まれます。
 炎症性腰背部痛※という、通常とはやや異なる痛み方をする腰痛を呈することが特徴となります。また、この疾患は皮膚や消化管、眼症状といった、腰痛と結びつけて考えることが難しい症状と関連性があります。非常に重要な疾患ではありますが、日本では脊椎関節炎の患者さんは少なく、そのため専門知識を持つ医師も多くないという現状があります。

※炎症性腰背部痛は、以下の特徴を有します。複数該当する場合には、かかりつけ医とご相談ください。
・40歳未満で発症
・発症は「ある瞬間から急に始まった」ではなく、「いつの間にか出現していた」
・運動すると改善し、安静では改善しない
・朝(起床時)や、夜(就寝後)に特に症状が強い

1) 脊椎関節炎外来の特徴

  • 膠原病内科の医師と、脊椎を専門とする整形外科の医師がチームを組んで診療にあたります。
    このため、基本的に同日に2つの外来をセットで受診していただきます。
  • 膠原病内科では、脊椎関節炎との関連性が疑われる全身の症状について、網羅的にチェックします。
    専用のアンケート用紙を用いた問診と、全身の診察や検査を行います。
  • 脊椎関節炎の診断においては、ある程度の期間の経過観察が必要となることがあります。
    その場合にはかかりつけ医での診療と平行して、脊椎関節炎外来にも定期通院することをお勧めします。

2) 受診の方法

 まずはかかりつけ医とご相談いただき、紹介状を作成いただいたうえで膠原病内科の初診外来(一般外来)へご予約ください。一般外来での診察を経て、脊椎関節炎外来へ院内紹介いたします。

6.関連病院

1.関連医療機関について

関連医療機関(常勤医在籍)

医療機関名 所在地 診療科 常勤職員
日立製作所ひたちなか総合病院
(筑波大学附属病院ひたちなか社会連携教育研究センター)
茨城県ひたちなか市石川町20-1 リウマチ膠原病センター 茂木 誠司(医長)、倉島 悠子、小國 英智
JA茨城県厚生連総合病院 水戸協同病院
(筑波大学附属病院水戸地域臨床研究センター)
茨城県水戸市宮町3-2-7 膠原病リウマチ内科 千野 裕介(内科部長)
水戸済生会総合病院 茨城県水戸市双葉台3丁目3-10 リウマチ・膠原病内科 萩原 晋也(主任部長)、田渕 大貴(部長)
茨城県立中央病院
(筑波大学附属病院茨城県地域臨床研究センター)
茨城県笠間市鯉淵6528 膠原病リウマチ科 後藤 大輔(部長)、高野 洋平(部長(難治性疾患担当))
茨城県厚生農業協同組合連合会 総合病院 土浦協同病院 茨城県土浦市おおつ野四丁目1-1 リウマチ・膠原病内科 梅田 直人(部長)、川島 朗、杉田 直輝
JA茨城県厚生連 茨城西南医療センター病院 茨城県猿島郡境町2190 リウマチ・膠原病内科 江辺 広志(科長)、
黒田 有希
茨城県厚生農業協同組合連合会 総合病院 土浦協同病院
なめがた地域医療センター
茨城県行方市井上藤井98-8 内科 湯原 孝典(副院長)
筑波学園病院 茨城県つくば市上横場2573-1 リウマチ膠原病内科 柳下 瑞希(医長)
いちはら病院 茨城県つくば市大曽根3681 リウマチ内科・つくばリウマチセンター 川口 星美
(科長・センター長)
牛久愛和総合病院 茨城県牛久市猪子町896 リウマチ・膠原病内科 野村 篤史(部長)

関連医療機関(当科関係医師による外来診療のみ)

医療機関名 所在地
日本赤十字社 水戸赤十字病院 茨城県水戸市三の丸3丁目12-48
茨城県西部メディカルセンター 茨城県筑西市大塚555
土浦診療検診センタ 茨城県土浦市神立東2丁目27-8
筑波記念病院(筑波総合クリニック) 茨城県つくば市要1187-299
つくば双愛病院 茨城県つくば市高崎1008
つくばセントラル病院(セントラル総合クリニック) 茨城県牛久市上柏田4丁目58-1
ユークリニック 茨城県つくば市倉掛1208-1
総合守谷第一病院 茨城県守谷市松前台1-17
取手北相馬保健医療センター 医師会病院 茨城県取手市野々井1926
龍ヶ崎済生会病院 茨城県龍ケ崎市中里1丁目1
常陸大宮済生会病院 茨城県常陸大宮市田子内町3033-3
キッコーマン総合病院 千葉県野田市宮崎100
軽井沢病院 長野県北佐久郡軽井沢町長倉2375-1

2.関連病院と膠原病リウマチ疾患ネットワーク

 茨城県内を中心に、複数の関連医療機関があり、筑波大学附属病院を中心にして外来・入院診療において各医療機関が連携しながら膠原病専門診療を行っています。関連医療機関の詳細は、「関連病院一覧」からご確認ください。
 また、膠原病疾患の多くが、国が定めた「指定難病」に該当しています。難病とは、発病の機構が明らかでなく治療方法が確立していない希少な疾病であって長期の療養を必要とするものと定義され、患者の置かれている状況からみて良質かつ適切な医療の確保を図る必要性が高いもので、一定の要件を満たし厚生労働大臣が定める疾患を「指定難病」とよび、医療費助成の対象としています。茨城県の難病診療連携拠点病院事業の一環として、膠原病リウマチ疾患ネットワーク専門部会を設置し、茨城県における難病対応の推進に努めています。

令和3年10月 膠原病リウマチ疾患ネットワーク専門部会
令和3年10月 膠原病リウマチ疾患ネットワーク専門部会

 難病医療の詳細、および当院における難病に対する取り組みについては、以下のリンクをご参照ください。